「屍蝋の街」
我孫子武丸・双葉社

95年発行の「腐蝕の街」の続編です。
かなり間はあいているのですが、作中での時間の経過はあまり無いようです。 ので、もしこれから読まれるのでしたら、続けて読むことをお勧めします。
記憶力に日々不自由しておりますので、確かな記憶とは言いがたいのですが、 前作よりいささかトーンダウンしているような気が致します。
しかし、だからといって面白くないわけではありません。
この話では追われる立場になった主人公がいかにその窮地を脱するかに主眼がおかれています。
ただ、最後はこう来るか、と思ってしまいましたね。
もうすこしひねりがほしかったかな、と。

0628


「名探偵を起こさないで」
井上ほのか:ティーンズハート

初版は1989年となっています。……十年以上前ですね。たしか購入したのもそれくらい前だったんじゃないかな。で、なぜに今ごろこんな本を読んでいるのかといえば。他の本探して本棚あさってたときに見つけて読み返してみたくなったからなのです。
さて。題からもわかるとおり推理ものです。一応長編という体裁は取っているものの、作中にふたつ謎解きがあり、中篇が二本という感じになるのでしょうか。文章はティーンズハートだけあってなれない人は非常に読みにくく感じるかもしれません。が、一読の価値はあると思います。
あと、このはなし、探偵役がちょっと特殊です。主人公の別人格なのです<探偵。現代の話なのに怪盗とか出てきますし。

010308


「捜神記」
干宝著・竹田晃訳:平凡社東洋文庫

……この場にはかなりそぐわない選択です。
この本は三国六朝時代の志怪小説に分類されます。志怪小説とは怪を志(しる)す小説、 という意味だそうです。ちなみにこの頃の小説は現在の日本語の小説の意味とは ちがって、あくまで事件を伝えるという記録性が重要なものなのですね。
つまり、当時の人はこの話の内容を信じていた、らしいのです。今読むとかなり 荒唐無稽なのですが。
さて。内容ですが、これはかなり多岐にわたっています。1話が短いので それこそ仙人から幽鬼、皇帝に庶民の話まで網羅しています。
もちろんほんの数行しかなくて、だからどうしたというお話も多いのですが、端々に 五行思想や、清談の影響が見えて面白いです。
当時の最先端だった五行思想は、現代人にとってのの科学に当たるわけですね。
つまり、事実の伝聞にしてもそれが世間に膾炙した時点で五行思想のフィルターが かかっていることになるのです。
まあ、何事にも科学を基準にする今と考え方としてはさして変わりませんね。

0925


「UNKOWN」
古処誠二:講談社ノベルズ

あらすじには重厚なテーマ性、リアリティ溢れる描写云々と紹介されていたが、読んでみると思いのほか軽い文章だった。・・・・・・最近熟読している本が抱朴子だの楚辞だのややこしいのが多い所為で余計そう感じるのかもしれないけど。
さて。ミステリーですね。
オートロックの部屋に誰がどうやって入ったのか?とう言うのが主眼なのです。 そう目新しい種明かしなんかはありませんが、なかなかよく出来ているのではないかと思います。
……ところで。この話の語り手は高い職業意識を持った青年なのですね。で、その彼と芋庵が同い年なのにちょっと衝撃を受けてしまいました。もう若くはないんですよねえ……。

010131



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